迷走一直線

無趣味オヤジの迷走日記

The 男気寿司!

今週のお題「寿司」

 

15年くらい前の話になるだろうか。親戚が遊びに来て寿司を食べに行こうという話になった。回転していない握っている寿司。回転寿司よりは高いが、握っている寿司屋としてはあまり高くはないということで、どのくらい違うものなのか興味津々で寿司を食べに行った。

 

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寿司屋に入り、カウンターに座る。ふと目の前に立っている寿司職人を見た。

 

デカい!ごつい!堅気に見えない!

 

なんとも強そうなお方が不動明王のように立っている。一瞬店を間違えたかと思うほどの迫力ある顔面!この人が握る寿司はどんな寿司なんだろうと想像が膨らむ。きっと”男気寿司”とでも言わんばかりの寿司を握るに違いない。

 

とりあえず注文をすると真面目な受け答えで一切の無駄がない。愛想を振りまくような笑顔などもない。まさに男気!きっと魚をさばくのに包丁などは使わず、手刀で一撃!とか⁉みたいなことを想像させる寿司職人に期待値がどんどん上昇する。

 

黙々と寿司を握る職人。「お待たせしました」と手渡されたその豪華な寿司は正に見事な男気寿司!ではなかった。

 

ちまっとした小さくかわいらしい、女の子が喜びそうなお寿司だった。まるで手の小さい女性が握ったかのようなお上品なお寿司でございます。

 

なんじゃこりゃ?と目を疑うほどに想像から大きくはずれすぎた寿司に、目の前のいかつい職人が握った寿司とは思えず、寿司と職人を交互に何度も見てしまった。大体3cm×1cmくらいだろうか?ゴツクてデカい手でよく握れるものだと感心はしてしまった。

 

プラスチックでできたおもちゃかな?食べれるのかな?と疑うほどにイメージが合わない。だがこれは寿司職人は何も悪くない。人を見た目で判断した私の先入観がいけないのだ。見た目とは裏腹に繊細な心を持ったやさしい男かもしれない。要は寿司を食いに来たのであって男気を見に来たわけではない。寿司が美味しければいいのだ。

 

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見た目は綺麗!握った人を見なければ違和感など微塵もない。寿司だけ見れば美味しそうだ。

 

とりあえず食べてみる・・・なにこれ固い。バッテラのようにシャリが固い!昔寿司屋でバイトをしていたことがあり、そのバイト先の寿司職人の方が「寿司のシャリは口に入れた瞬間にパラパラパラッとほぐれて、ふわぁ~っと口の中で広がるのが良いシャリだ」と言っていた。だがこの寿司は噛んでも噛んでもほぐれない。だんごか!

 

ネタも薄くて味気ない。あまり批判的なことは言いたくないのでオブラートに包んで言わせてもらうなら、まずい!

 

握っている寿司屋としては安い店と言っても、普段行っている回転寿司に比べて2倍くらいの値段を払うのにこの味はひどい。いや、ひどいというより味があまりしない。これならスーパーの総菜のほうが全然おいしい。こんなことってあるのね…と思いながらなんか悲しい気持ちになった。寿司って幸せな気持ちになるものじゃないのか?みんなで「美味しかったね!」と笑顔になる予定が、全員黙ったまま黙々と食べて、食べ終わると同時に顔を見合わせ「帰るか」とすぐに店を出た。そして満場一致でまずい!

 

そしてやはり私以外もみんなどんな男らしい寿司が出てくるのかということが楽しみだったらしく、見た目と寿司のギャップに内心『この小さい寿司をあのゴツイ手で握ったの?』という違和感で頭がいっぱいになり、味を覚えていないという人までいたほどだった(笑)

 

その後、誰も寿司を食いに行こうという話になってもその店には誰も行きたいとは言わず、味を覚えていない人に「もう一回行ってみる?」と聞いても「いや、いい」と断られる(笑)

 

握っている寿司屋なら美味しいという訳ではないということなのだろう。寿司というのはさすが”寿司職人”というだけあって職人技であり、難しいものなのでしょう。豪快であればいいというものでもなく、繊細なだけでもダメ。

 

長年の努力と経験で試行錯誤を重ねた”握り”だからこそ出せる本当の美味しさがある。だからこそ本当の寿司職人の握る寿司は美味しくて感動すら覚えるのだろう。

 

昔のバイト先の寿司職人の寿司を一度食べたことがあるが本当に美味しかった。口の中でシャリがとけるようにほぐれて広がっていく。あれほど美味しい寿司をあの時以来食べたことがない。私は感動して本当に美味しかったということを伝えに行った。

 

「俺なんかまだまだだよ。一生勉強だよ。」と照れ臭そうに言ったのを見て、この人は本当に”寿司職人”なんだなぁと思った。今はもう引退しているだろう。もう一度あの人が握る寿司が食べたかったなぁ。